差動信号とコモンモード信号

シングルエンド信号

一般的に、電圧信号を伝送するには2本の線が必要です。1本は信号線、もう1本はグラウンド線(接地線)です。このような信号をシングルエンド信号 (single end signal) と呼びます。私たちがよく目にするのはこのタイプの信号です。シングルエンド信号源 Us​ を記述する際は、片側(信号線)のみを描き、もう一方(接地)はデフォルトで省略されることが一般的です。
シングルエンド信号は、長距離伝送中に外部の電界ノイズの影響を不可避的に受けます。信号源が一度ノイズの影響を受けると、汚染された信号から純粋な信号を取り出すことは非常に困難です。

シングルエンド信号

差動信号の提案

信号がノイズの影響を受ける問題を解決するために、科学者たちは一つの解決策を考案しました。それはシングルエンド信号を差動信号 (differential signal) に変更する方法です。差動信号にも2本の線が必要ですが、両方とも信号線です。1本は正(+)の信号線、もう1本は負(-)の信号線であり、これらの間の位相は互いに逆(下図参照)になっています。差動信号は、電圧信号の大きさを差電圧 Ud​=Us+​−Us−​ で表現します。差動信号の2本の信号線も外部ノイズの影響を受けますが、このノイズは通常、両方の信号線に同時に加わります。

差動信号/同相信号

差動信号における同相ノイズの原理

  • 差動信号の定義: 2本の信号線間の電圧差。
  • 同相信号の定義: 差動信号において、2本の信号線が共有する信号成分。すなわち、同相信号を含む実際の差動信号値の平均値を指し、Uc​=(Us+​+Us−​)/2で表される。
    (注:同相信号と差動信号という概念は、差動形式の信号源に対してのみ用いられ、シングルエンド信号にはこの概念はありません。)

通常使用される信号伝送線は、ツイストペアケーブル(より対線)のように密に撚り合わせられた形態をとっています。信号伝送中、2本の線は互いに非常に近接しているため、一般に両線が同じ外部ノイズの影響を受けると考えます。つまり、正(+)信号にはノイズ成分 Uc​ が重畳され、負(-)信号にも同じノイズ成分 Uc​ が重畳されます。これは、差動信号が外部からの同相信号 Uc​ によるノイズ(同相ノイズ)を受けた状態です。差動信号の値(差電圧 Ud​)の大きさは、2本の信号線の電圧値を減算することで得られるため、Ud​=(Us+​+Uc​)−(Us−​+Uc​)となります。この式から容易にわかるように、減算を行うと同相ノイズ成分 Uc​ は打ち消し合い、元の差動信号成分 Us+​−Us−​ のみが残ります。これにより、不要な同相ノイズを効果的に抑制することができるのです。

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